
今回私は、ノロの末裔として、先人たちの叡智に深い敬意を表し、現在、衰退の危機に瀕している奄美大島の固有言語へと着目する。奄美方言は、単なる日本語の一方言という枠を超え、7つの母音を持つ独立した琉球語として、独自の美しい言語体系を育んできた。
この言語を視覚化するため、奄美方言の研究者の協力で話者の音声をデータ化した。特に、奄美方言特有の口の開き、舌の位置、周波数といった発音の要素を、スペクトラムグラフとして詳細に抽出し、テキスタイルデザインの原データとした。
その貴重なデータをセイコーエプソン様のデジタル捺染の技術を用いて、テキスタイルのグラフィックへと昇華させた。さらに、生地の一部は大島紬の織元である有限会社はじめ商事様との連携のもと、伝統的な大島紬の絹糸を経糸に用い、裂き織りの技法を駆使して手織り機で織り上げられ、「奄美布(あまみふ)」として新たなテキスタイルに生まれ変わった。
ノロの叡智が概念を具現化したように、私はこの貴重な言語を、後世に伝えるべく衣服という媒体をもって表現する。その美しさと、先人たちの精神を、未来へと力強く継承していくことが、このプロジェクトの使命である。
素材:コットンローン, 大島紬(反), 大島紬(着物)
協力:セイコーエプソン株式会社、有限会社はじめ商事、広島大学 大学院 人間社会科学研究科 国語文化教育学部講座、日本学術振興会 特別研究員
Photography by YASUNARI KIKUMA / ©︎ FASHION FRONTIER PROGRAM

そんな私の支えが奄美大島の妖怪「ケンムン」の存在である。ケンムンは島の生態系保護の為に人間に悪戯をする妖怪として知られている。しかし、当時の私はケンムンの絵本や逸話を聞く中で目には見えないものの傍に居てくれる1人の存在として彼を認識していた。
大人になった今でも彼の存在は心に強く残り奄美大島の衰退する文化とサトウキビの新たな活用に目を向け島のルーツと自らのアイデンティティをもと、文化の継承と昇華を目的とするプロセス。不器用な優しさと無邪気さを持つ衣服を創造する。
日常の中で長い時間を共にする衣服だからこそ妖怪(ケンムン)と共に身に纏ってほしい。それが私が感じる妖怪(ケンムン)である。
素材:バガスペーパーデニム12.5oz / バガス糸混合みなおり
Photography by YASUNARI KIKUMA / ©︎ FASHION FRONTIER PROGRAM
Instagram:@kiyoshitomiyama_