国立新美術館にて、FASHION FRONTIER PROGRAM 2022の最終審議会と授賞式が開催されました。
2022ファイナリスト8名、2021受賞者3名、計11名の参加者による渾身の作品が集結し、それぞれのプレゼンテーションの後、審査員の皆様による審議が行われました。


FASHION FRONTIER PROGRAM 2022の審査員は、寒川裕人氏(現代美術家)、栗野宏文氏(株式会社ユナイテッドアローズ上級顧問)、五箇公一氏(国立環境研究所・生物多様性領域室長)、田根剛氏(建築家)、冨永愛氏(モデル)、中里唯馬氏(ファッションデザイナー)、中野信子氏(脳科学者)、宮田裕章氏(慶應義塾大学医学部教授)、渡辺三津子氏(ファッションジャーナリスト)です。

厳正な審査の結果、今年の受賞者は、以下の通り決定いたしました。
グランプリ|Grand Prize
山田 菜々葉さん
“Cómhaireachtáil caorach agus daoine”

春に刈り取った毛が衣服になるまで、様々な工程がある
洗って、染色して、紡いで、編んだり織ったりしてやっと着られるようになる
そうしているうちに春になり、また毛をいただく
季節は巡り、羊は死んで、私もいつか死ぬ
羊も人も、一生懸命編んだセーターだっていつか土に還っていく
そうやって生きている
私は羊も人間も幸せに暮らせる世界のなかで、人々をあたためるものを編んでいきたい
本作品は全て愛知牧場に住む羊、「さあこ」のウールを手紡ぎ、手編みをして制作しています。アクセントとなる赤色は、編み終わりの糸端を染色することでいつか誰かが編みかえる際の目印となります。
素材:ウール、染粉
協力:愛知牧場羊飼い 丸岡圭一、秋田じゅんこ、羊飼いの糸の皆さん、祖母井茉美
Photography by YASUNARI KIKUMA
Hair and Makeup by Yuka Fukano, Marina Tsukahara, and Yuka Ishizuka for SHISEIDO
Model ZERIKA
©︎ FASHION FRONTIER PROGRAM
準グランプリ|Runner-up
村尾 拓美さん
”リボンの男たちへ”

どれだけバーチャルが発達しようと、リアルの人間との関わりを求めている。
バーチャルとリアルの繋ぎ方を考えて、3Dの身体に配置したパーツを、布に直接3Dプリンターで出力されたもの同士を繋いで構成されている服を作った。
体のサイズが変わっても、パーツを取り換えれば着続けることができる。制作に使った3Dモデルは、そのままアバターとしてバーチャルで使うこともできる。
デザインのモチーフは“リボンの男“。新しい経済活動をする象徴。
主張する意思は、バーチャルとリアルを繋いで、一人の人間たらしめるものになると思う。
素材:[生地]KARAMARINE-001 オーガニックコットン トリコット
[フィラメント]PBAT
引用:河出書房新社 (2019/12/11) 山崎ナオコーラ著「リボンの男」
Photography by YASUNARI KIKUMA
Hair and Makeup by Sachiko Hayashi, Miki Marutani, and Yuka Ishizuka for SHISEIDO
Model Fumiya Yagi
©︎ FASHION FRONTIER PROGRAM
準グランプリ|Runner-up
山本 勇大さん
”垂れ流しの記憶”

世界で毎日のように問いかけられているこの言葉に対して「いらないです。」と答える人が一定数いる。私は、この当たり前になっている生活の一部に対して大きな疑問を抱いている。
我々人間は記憶や思い出、自己情報を異常に大切にする動物なのに何故1番身近にある記憶を湯水の様に垂れ流すのか。この問題をファッションを通し表現した。記憶の終着点、脳をイメージしたシルエットに感熱紙であるレシートの特性を活かしオプ・アートのように視覚的に訴え掛けたり、私の記憶の中にある映像を浮かび上がらせるなど目には見えない【記憶】というものを私なりに表現した。
素材:レシート(感熱紙)、寒冷紗
Photography by YASUNARI KIKUMA
Hair and Makeup by Taro Kobayashi, Chihiro Toyoda, and Yuka Ishizuka for SHISEIDO
Model AYARI
©︎ FASHION FRONTIER PROGRAM
受賞者の皆さん、おめでとうございます。


FASHION FRONTIER PROGRAMは、完成した作品を提出していただいて受賞者を決定するコンペティションとは異なり、応募者の中から選出された8名のファイナリストに「多様性と包括」「日本の産地の現状」等をテーマとした講義や、素材やモノ作りについて学ぶワークショップ、生産現場視察といったエデュケーションプログラムに参加して頂きます。
そこで得た学びやフィードバックを自身の作品へ昇華させていただくことで、最終的に8名のファイナリストから3名の受賞者が決定します。「クリエイティビティ」と「ソーシャルレスポンシビリティ」そのどちらに対しても高い意識を持つことが評価の軸となります。
約3ヶ月間、この11名はこのプログラムを通じて共に学び高めあいながら、自身の作品と向きあってきました。

場所: 国立新美術館 1階ロビー(六本木駅徒歩5分、乃木坂駅直結)
期間: 2021日12月1日(水)~12月12日(月) ※火曜休館
開館時間: 10:00-18:00
(チケット不要でどなたでもご覧いただけます。)