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発起人 中里唯馬氏インタビュー クリエイターに新しい学びと評価基準を/門戸は広く、志は高く

■FFP発起人の中里唯馬氏に聞く

ソーシャルレスポンシビリティ(社会的責任)とクリエイティビティ(創造性)を併せ持つ、
未来のファッションデザイナーの発掘・育成を目的に、2021年にスタートしたFashion Frontier Program(以下FFP)。

発起人であるファッションデザイナーの中里唯馬氏に、立ち上げの思いや、プログラムの現在地について聞いた。

――FFP立ち上げの経緯は。

 

コロナ禍という大きな変化が世界を席巻した2020年頃、サステナビリティへの認知が広がり、意識も高まっていました。
これまでのライフスタイルを省みるムードも世界中に広がりました。
自分自身もデザイナーとしてモノづくりを見直し、自分が身を置くファッション産業について改めて深く考えました。

 

こうした環境下、クリエイターはどう意識を変えればいいのだろうか?
情報をどう集めればいいのだろうか?
世の中はどんな評価基準で動いているのだろうか?

こうした疑問が浮かびました。

 

それに応えるため、「学びと評価を融合した場」を提供したいと思い至りました。
単なるアワードではなく、学ぶ場や考える場の提供、将来の活動のサポートなど、さまざまなファンクションを詰め込んだプログラムがFFPです。

 

目指すのは新しいデザイナー像の創造です。
ブランドを持ち、ブティックを構え、世界で認知されるという従来型の成功モデルの枠にとどまらないクリエイターを発掘・育成したい。
多様な人材が活躍できるようになれば、ファッション産業にも新たな可能性が広がります。

――他のアワードと異なるFFPの特徴は。

 

応募者の〝現在地〟だけでなく、〝志〟や〝ポテンシャル〟も含めて長い目でクリエイターを評価するのがFFPです。
応募要件の制約を可能な限り取り払い、年齢や職業、経験、国籍を問わずに応募を受け付けています。

 

審査員のバックグラウンドの多様性もFFPの特徴です。
ファッションや衣服の専門家だけでなく、科学や建築、現代アートなど様々な専門家が審査員を務めています。
衣服は人間が生きていく上で欠かせないもの。
だからこそ、多様な視点でディスカッションし、評価・審査します。
他のコンテストで評価されなかった人がFFPで評価されるといったことも起こり得るでしょう。

 

ファイナリストに提供するプログラムもユニークです。
ソーシャルレスポンシビリティとクリエイティビティに関する専門性を持つ講師を国内外から招き、学びの場を提供しています。
講義後の質疑応答では、様々な価値観やバックグラウンドを持つ国内外のファイナリストが意見を交わすことで互いに刺激し合う、濃密な時間が生まれています。

 

こうした時間を経て、自分の持つ価値観や美意識が壊され、エントリー時点とは全く異なる作品が生み出されることがあります。
自分の価値観が壊れる経験は、クリエイターにとっては非常に重要です。人によってはタフで、恐怖さえ感じるような経験かもしれません。
しかし、こうした試行錯誤を経て再構築された美意識・価値観は、以前のものよりも強固になります。
実際に過去のプログラムでは、驚くほど変化し、成長を遂げるファイナリストを目の当たりにしてきました。

 

社会課題と創造性の両立というFFPは、ハードルが高いと思われるかもしれません。
ですが、過去の受賞作品を見たり、自分であればどんな社会課題に着目するかを考えるだけでも、クリエイターにとって大きな一歩となります。
臆せず、チャンレンジして欲しいと思っています。

――今後、FFPはどう進化していくのでしょうか。

 

開拓者精神や独自の能力を持つクリエイターと社会とを接続するためのサポートを充実したいと考えています。
その一つとしてマネジメント業務の提供を構想しています。

 

また、クリエイターと社会とのマッチングとして、日本の産地や伝統産業とつながりを作りたいと考えています。
応募者の中には、産地や工場に足を運ぶフィールドワークを行っている人もいます。
FFPとしてそうした動きをもっとサポートしていきたいと考えています。

 

海外発信も強化します。英語での発信を始めたことで海外からの応募者も増えています。
2023年のファイナリストで準グランプリを受賞したJulia Moserさん(オーストリア)は、自身が講師を務める大学でFFPを主題とした授業をスタートしてくれました。
オーストリアのメディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ」では2022年から毎年、ファイナリストの作品を展示し、ワークショップなど通じて交流も行っています。

 

一般の人にもFFPをもっと知ってもらいたいとも思っています。
ファッションはすべての人の身近にあるものですから、入り口として入りやすい。
アワードをエンターテインメントとして楽しんでもらうのもいいですし、受賞作品を通じてファッション・衣服の意味や機能、社会課題に目を向けるきっかけになればと思います。

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