
壊れゆくこと、それは終わりではない。
和紙は時間とともに静かにかたちを変える。触れれば柔らかく脆さを帯び、やがて水に溶ければ繊維へ戻り、再び漉き直される。
その変化は欠陥ではなく、纏われた時間の微かな痕跡として息づいている。
福井で生まれ育った私は、幼いころから越前和紙に触れていた。
破れた紙を水に戻し、別のかたちにして遊んでいた記憶が、知らないうちに“戻る・変わる・また生まれる”という感覚を私の中に刻み込んだ。
和紙は壊れても消えず、姿を変えて在り続ける。
その在り方は、新体操やバレエを通して育まれた“身体と衣服の境界がほどける感覚”にも通じている。
身体が動けば衣服が揺らぎ、その揺らぎがまた身体を映し返す。和紙はその微細な変化を、静かな層として受け止めていく。
制作を深める中で、越前には紙を生んだとされる川上御前が祀られ、千年以上、かたちを変えながら紙づくりが続いてきた土地であることを知った。
その営みは、続けることで受け継がれていく“時間の積み重ね”そのものだと感じている。
《すく》は、壊れることを否定せず、変化をそのまま抱きとめる衣服である。
完成を固定せず、着る人の時間とともに変わり続け、その変化がその人だけの記憶となっていく。
私は衣服を、受け渡され、継承され、時間とともに生きていく存在として提示したい。
和紙がそうであるように、服もまた“続いていくもの”である。
素材:越前和紙、蒟蒻糊
協力:柳瀬良三製紙所
Photography by YASUNARI KIKUMA / ©︎ FASHION FRONTIER PROGRAM
Kazusa Horikawa 堀川和紗
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