
私は、地元の播州織のような伝統産業が未来に受け継がれていくためには、 一時的な美しさを消費する社会のあり方を見直し、伝統産業に触れる機会を増やすことが必要だと考えている。
なぜなら、海外で大量生産されたものに触れるだけでは、私たち日本人が長い年月をかけて育んできた「美の感受性」が十分に育まれないと感じるからだ。
日本の伝統産業品は、自然と共存し、四季の移ろいを生活に取り入れようと工夫を重ねて進化してきた。その中には、日本人として大切にすべき美意識が確かに宿っていると信じている。そうした日本の美に触れ続けることは、伝統産業だけでなく、日本のモノづくりの根幹にある感性を守ることにもつながると考える。
私は、消費そのものを見つめ直すきっかけとして、現代では薄れつつある 「モノには魂が宿る」という価値観に着目。さらに、明治の近代化の中で日本古来の価値観が失われていくことに危機感を示した説話集『遠野物語』とも共通する視点を見いだし、その中でも現在まで深く信仰されるオシラサマをコンセプトの核に据えている。
デザインにおいては、オシラサマの起源となった馬と娘の悲劇的な恋物語や、布を幾重にも重ねる風習から生まれるシルエットと構造、そして晴れ着としての願いを込めて用いられた赤色を取り入れた。そこへ、私自身のパーソナルなアイテムであるM-65コートのディテールを融合させ、衣服としての完成度を高めている。
さらに、シルクのアウターに施した赤のグラデーションや、赤のコートには、海外に輸出される前の古着のセーターを素材として用いた。特にセーターは輸出先の気候に合わないという理由で大量に不要とされており、この現状を可視化したいと考えたためである。染色には、ポリエステルやアクリル用の染料の特性を活かした技法を採用した。これはまさに、短いサイクルで消費されがちな安価な衣服だからこそ可能になる技法であり、現代の消費構造を問い直す象徴にもなっている。
素材:日本産シルク、播州織残反物、輸出前の赤いセーター、ウールフェルト、ペットボトル由来のリサイクル糸の天竺
協力:YKK株式会社、株式会社Kurokawa、Yusuke Omori ordershoes maker
Photography by YASUNARI KIKUMA / ©︎ FASHION FRONTIER PROGRAM
Instagram:@momoriiromom
FASHION FRONTIER PROGRAM2026ご応募受付中! 受付期間:4/20(月) – 5/31(日)
ENTRYより、メールアドレスをご登録いただくと、応募要項/エントリー案内が届きます。
メールに記載のリンク(エントリーフォーム)より、応募書類を提出してください。
詳細はこちら