本年度のファイナリストのポートレートと併せて、講義を通して自分に起こった変化や最終作品に向けての意気込みをご紹介していますので、ぜひご覧ください。

Alicja Kamaj (ポーランド)
講義を通じて、私はさまざまな感情を経験しました。
最初は興奮から始まり、途中では疑念や不安を抱き、最終的にはその中間のような場所にたどり着きました。とはいえ、それを「心地よい場所」と呼ぶのは少し奇妙かもしれません。
ただ、自分にコントロールできる事象を理解し、それを最大限に活かすことができる地点に到達したのだと思います。
講義で得た最も大きな学びは、自分ひとりの力では十分ではないかもしれないし、あなたの力だけでも十分ではないかもしれないけれど、私たちのような人が集まれば、思いもよらない形で物事を変えることができる、という気づきでした。
だからこそ、これからも歩みを続けたいと思います。
最終作品を発表し、バックグラウンドの異なる他のファイナリストたちと経験を交換できる機会が増えることに、とてもワクワクしています。
自分の計画には課題があることも承知していますが、それがかえって好奇心とモチベーションを高めてくれます。
私はデザイナーであり、自分が追求するアイデアの「創始者」です。作品はその形や素材、物語を通じて、いつもその過程で独自の真実を私に明かしてくれます。
それこそが、この仕事の奇妙でありながら力強い部分なのです。

Ao Umemiya / 梅宮青 (日本)
FFPを通して、アパレル産業の現状に正面から向き合うことで私の考えが大きく変化しました。数多くの講義を経て「受け手がいなくても暗闇にボールを投げ続ける」という言葉が特に、心に強く残っています。
デザイナーとして社会に考えを投げかけ、少しでも影響を与えられるような活動をこれからも続けていきたいと考えています。
今回はその一歩として身近な人に活動を直接伝え、お家に眠っていたり、処分手前の着物を回収させていただき新しいテキスタイルを制作、作品にします。
最終作品は完成することがゴールだとは思っていません。作品を通して考えを発信することで対話を生み、新しい価値を創造するきっかけになることが目標です。「MUSUHI」を纏うことがその一歩になることを願いつつ、後悔なく最終審査を迎えられるよう最善を尽くします。

Emily Misaki Hon (オーストラリア)
講義やメンター、仲間との対話を通じて、私はファッションとその産業を、課題やポジティブな影響の可能性、そしてその中でデザイナーとして果たす役割を含め、より包括的に理解できるようになったと感じています。
プログラム参加以前の私の知識は、かなり表層的なものだったように思います。
ファッションがもたらす環境・社会的影響、特に衣服が人や環境への配慮なしに廃棄されている実態を学んだことは、認識が変わると同時に時に圧倒される経験でした。
これらの学びから、デザイナーにはシステムに挑戦し、対話を開くような作品を生み出す影響力があるのだと気づきました。
大きな気づきの一つは「ストーリーテリングの力」であり、それが人々とつながり、振り返りを促すことができるという点です。
私はこの学びを自分の作品に生かし、「憧れの対象」としての美ではなく、「何かが見出されるもの」としての美を探求する作品をつくり、人々が立ち止まり、より意識的に関わるきっかけを与えたいと思います。
最終作品では、アップサイクリングと衣服のライフサイクルの再構築に焦点を当てることにワクワクしています。
より意図的に、感情に響き、人々がどう服を消費し、着用し、価値付けるかを再考するよう促す作品をつくりたいという動機が強まりました。

Gerald Brandstätter (オーストリア)
このプログラムを通じて、素材・プロセス・社会的課題のつながりをより意識し、全体的な視点を持つことの重要性を学びました。
私にとってデザインとは、問題解決の手段であるだけでなく、ものごとの関係性を深く理解し、変化の新たな可能性を切り開く営みへと変わりました。
最終作品においては、侵略的外来植物との関わりをさらに深めたいと考えています。これらの未利用資源を、単なる原材料ではなく、文化的・生態学的な物語を宿す存在として捉えられるようになりました。
特に「デザインとは暗闇にボールを投げるようなものだ」という中里唯馬氏の言葉に強く刺激を受け、未知の方向へとより自由に思考を広げることを後押しされました。
また、講義を通じて、再生的な戦略・生物多様性・審美的アプローチが密接に結びついていること、そしてそれらを統合的に考えることの重要性を実感しました。
侵略的外来植物から素材を抽出し、それを用いてテキスタイル用バイオポリマーを開発することは、サステナブルファッションに新しい視点を開く試みです。
サステナビリティは制約ではなく、資源に対する尊重・好奇心・創造性に基づく新しい態度なのだと示したいと思います。
技術的なコンセプトを超えて、衣服は社会にとって美しく、喜びをもたらし、意味を持つ存在であるべきだと考えています。

Hideki Morimoto / 森本 秀樹 (日本)
FFPを通じて1番の変化は中里さんのアドバイスを受けて、デザインの深度が深まったことです。デザインをする際に、なぜ?の自問自答を繰り返していますが、最深部だと思っていた答えに「なぜ?」と問いかけられました。その際に、考え方も併せてアドバイスを頂き、まだ深い部分に潜れるんだ!とワクワクしたのを鮮明に覚えています。また、講義を通じて、「伝統産業を未来に継承したい」という想いを発信する自分の立ち位置や、向き合いたい問題がクリアになったことも大きな変化となりました。FFPでは、消費の問題に向き合う機会を与えられる作品を作りたいです!この背景には大量生産された製品が身の回りに溢れた現代の生活では、美しいものを美しいと感じる感性が育ちにくくなっていると感じ、感性を取り戻すためには歴史や風土に培われてきた伝統技術に触れることで、日本人が紡いできた豊かな感性を呼び起こすことができるのではないかと考えます。

Hikari Hayashi / 林 ひかり (日本)
ものを作り出すことは同時にゴミを生み出すことではないかと自分に問いかける時間が増えました。
講義で視聴した「燃えるドレスを紡いで」に映るゴミの山は、衝撃的であると同時に、儚く美しくも見えてしまい、強く心に残りました。
一人ひとりには必ず果たすべき役割があり、私は「考えることを形にして伝えること」が自分の役割だと感じています。
サステナビリティとは環境や社会制度の面で語られることが多いですが、私はそこに「人の温かさや感情」も含まれると考えます。
思い出の詰まった子供服を大切に残すことのように、人と人、物と人とのつながりを尊重することもまた持続可能性に通じるはずです。
その視点を胸に、日常で生まれる思考を手がかりに最終作品に取り組んでいきたいと思います。

Kazusa Horikawa / 堀川 和紗 (日本)
FFPでの講義を通し、多様な実践や考え方に触れ、当初は「自然に還る素材研究」として和紙での制作に取り組んでいた自分の視点に広がりが生まれました。
壊れる服をつくるという試みは、無責任ではないかと迷いもありましたが、講義や対話を重ねるなかで、壊れることが単なる消耗ではなく、人が自らの感覚や記憶と向き合う契機になり得るのではないか、またそうなる作品を作りたいと思いました。
現在は、越前和紙を用いて、壊れ方を操作する実験を進めています。
裂けていく過程や断面の表情を作品に取り込み、衣服を「完成品」ではなく「変化を体験するもの」として提示したいと考えています。

Nao Taki / 滝 直 (日本)
これまであまり意識してこなかった環境負荷について、講義を通して改めて考えるきっかけを得ました。作品を「作る」だけでなく、「使われた後」「捨てられた後」にどうなるのかを想像することが、今の時代のデザイナーには欠かせないと感じています。
その学びを踏まえ、最終作品では工場で廃棄予定だった糸を活用し、新たな命を吹き込むようにニットの生地を制作しています。限られた資源の中でどのように創造できるかを探ることは、自分自身の制作観にも大きな影響を与えました。
また、ファッション産業の課題を学ぶ中で、自分が将来どのようなクリエイターでありたいかを深く見つめ直す機会にもなりました。持続可能で、誰かの日常を少し明るくできるような表現を目指して、最後まで全力で取り組みます。
着用者が感じる想いや、モデルやポージングによる魅せ方もその大切な要素となります。
これから行われる作品撮影では、その全て、ぜひ今後の更新もお楽しみにお待ちください。
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