
「産霊(むすひ)」は日本の古神道における概念であり、「根源的な力」や「万物を生み出す力」などという意味がある。
現代は、モノもココロも消費することが当たり前になり、その消費スピードはかなり速いように感じる。今回この作品の構想段階において、アパレル産業の廃棄問題について心を痛めたことがコンセプトの軸となった。
日本の神道である八百万の神の考え方のように、過去人々は、自然界や生命に宿る力を信じてきた。本作品では「着物」をデザインインスピレーションとし、現代で注目されにくくなってしまった意味を拾い上げ、衣服を通して消費について考えるきっかけを作ることを試みた。
その一歩として身近な人に直接思いを伝え、お家に眠っていたり、処分手前の着物を回収し、新しいテキスタイルを制作した。よこ糸には、ほそく裂いた着物の糸を、たて糸には自然素材を用いている。あえて染色せず、一本一本の糸を交差させ願いを込めながら、おみくじのように結び合わせることで新しいテキスタイルを創造した。着物幅で織りあげ、裁断せず複数枚を繋ぎ合わせることで、無駄を出さないデザインにしている。シルエットは人が纏うことで柔らかさが生まれ、完成する。神様との縁を結ぶ行為として木や縄におみくじを結びつけるという儀式が日本にはある。そこからインスピレーションを受け、”形”と”形のない思いや願い”が結びつく様子を衣服として表現した。
Musuhi が持つ価値は3つ。第1に、産霊を纏い、衣服を通して”消費”について考えるきっかけを作ること。第2に、無染色とゼロウェイスト。第3に、Musuhi という言葉が、その意味とともに世界の共通言語となることだ。
私が願うのは、対話を生み新しい価値を創造するきっかけになること。「Musuhi」を纏うことがその一歩になることを願う。
*古神道-仏教や儒教など外来の思想が入る以前の、日本固有の神道の信仰や儀礼の総称
素材:廃棄予定の着物、綿糸100%
協力:saaya、寺内信子、 安本聖子 、梅宮順子
Photography by YASUNARI KIKUMA / ©︎ FASHION FRONTIER PROGRAM
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